集団接種

 




 朝霞地区4市(朝霞市、志木市、和光市、新座市)のうち和光市と朝霞市の集団接種の準備に関わっています。当朝霞地区は県内のまん延防止等重点措置地区で、4市を合わせた感染者数は3,000人に近く、さいたま市、川口市に次いで多い地区です。

変異ウイルスの感染性が高いと言われる中、感染は律速していて、ワクチン接種と早さの競争のような状況です。

私は朝霞地区薬剤師会長という立場なので、薬剤師に協力を求められれば、そこは頑張るしか無いと思っています。


 コロナワクチンの普及については、打手の不足が大きく報道されていますが、このワクチンはマイナス80℃で保管しなければならず、その他にも細かな管理が求められています。冷蔵庫に移したら5日間で使い切る、室温に戻したら2時間以内に準備開始、6時間以内で打ちきる必要があります。バイアルを強く振ってはいけない、遮光は必要などもあります。ワクチンの汚染は効果を下げてしまうので無菌を意識した衛生的な手技が大切です。これらが担保されなければ、見た目はワクチンでも実は効果のない液体ということにもなりかねません。

その点を意識した報道はあまりありませんが、現場が混乱し、実は中身が生理食塩水だけだったとか、空気しか入っていなかったなどの報道も出てきました。打つ前の製品としてのワクチン準備が本当はとても重要な事がわかります。

なので、行政や医師会から協力を求められるのは当然です。薬剤師は直接の注射はできませんが、それ以前のところでとても重要な役割があり、相変わらず縁の下で支える職能です。



 会場の注射取扱スペースに入ったら、先ずはテーブルや物全体の消毒から始め、室温に戻したバイアルを1.8mlの生理食塩水で希釈します。生理食塩水は20mlのバイアルに入っているのですが、無菌管理のために1回分の使用しか認められていません。つまり残った生理食塩水は廃棄します。混和する時もゆっくりと上下を逆さに10回、決してシャカシャカ振ってはいけない。その後、ご存知のように1本のバイアルから0.3mlを採取し、5本又は6本の摂取用ワクチン注射器を作ります。もちろん1.8mlや0.3mlであるという点は2人でチェックしながら進めます。

 病院で行うときは、これらの管理と作業は病院の薬局が行いますので、医師も看護師も安心して接種することができますが、集団接種会場ではその辺りが明確ではなく、初めは医師と看護師がこの準備から行うことが予定されていたようです。現実的になると、500〜1000人分を用意するのは難しい事がわかり、薬剤師会に協力要請が来ました。

街の薬局は、注射を扱う事がほぼ無いので、この手技を覚えるには少しトレーニングが必要でした。多くの薬局薬剤師は、研修会に出席し、トライアルの注射セットで毎日自宅で練習しました。現在、薬剤師会ではその方々に支援のエントリーをお願いし、集団接種会場への派遣シフトを作っています。

 集団接種会場の設置に奔走している行政の方々の様子にも頭が下がります。集団接種は私が小学校の頃は一般的でしたが、予防接種の強制は副作用の回避の観点で問題ということもあり、近年では個人が医療機関で受ける体制に変わりました。50年以上ぶりの事業ということもあり、行政としては初めての試み、明らかに大きな混乱が生じています。でも、市の職員たちが頑張っている姿を見ていていると、過労で倒れないかという心配もしてしまいます。私たちとの連絡は、ほぼメールなのですが、休日や真夜中のやり取りになることもあります。でも彼らがワクチンを摂取できるのはいつになることやらです。私は会場で働く方々には接種券を出して、当日の余ったワクチンは彼らが打つで良いと思っています。

 現時点では、医療職もまだ接種していない人が沢山います。でも、大きな問題として、在宅も含めた介護サービス従事者の優先接種が明確になっていない点があります。変異ワクチンは若者の重症化もあるようで、福祉を担う若いヘルパーたちが倒れたら高齢者を守れません。こちらも、急ぎ勧めてほしいと強く願います。

 そのためにも、薬局ができることには積極的に関わり接種が少しでも進むよう協力したいと思います。