薬の値段

  薬剤師の仕事は、薬物治療における患者さんの安全と安心を補完することです。可能な限り副作用を避け、最小の量で最大の効果を出すことを目指す。相互作用などによって薬の効果が過剰になれば中毒や副作用の原因になるし、逆に効果が薄れてしまうような組み合わせもあります。薬の副作用を見逃してしまい、新たな薬が処方されることはくれぐれも避けたい。ポリファーマシーの原因が副作用の見逃しの場合もあります。


 つい忘れがちなことが、費用の事です。近年は高齢化ということもあり慢性疾患の治療が中心になっていて、長く服用する場合が多くなっています。医療費や薬代はまさに生活費の一部となります。国民皆保険ですから実際にかかる医療費の1〜3割の支払いですが、それでも毎月となれば馬鹿にできない金額になるときもあります。高額療養費という制度もありますが、それは月額の負担が8〜9万円以上かかる場合です。逆に言えばそこまでは自己負担となるわけですから、毎月の医療費が3万円などという状況も起こることになります。


 最近は高額な薬が多くなっています。有名なのは、がんの治療で使う免疫チェックポイント阻害剤があります。ノーベル賞をもらった薬ですから画期的な薬に違いありませんが、薬の値段だけでも月に80万円以上です。それでも発売当時からはかなり安くなりました。

このような特殊な薬でなくても、1錠1000円以上という薬は結構たくさんあります。うちの薬局でも、50品目は下らないと思います。使い方にもよりますが、1日3回1回1錠という場合は、1錠300円でも1日では1000円になります。

1日1000円の薬代って凄いですよね。1ヶ月分で3万円です。自己負担でも月1万円。こんな薬が最近たくさんあるわけです。大概は新薬なのでジェネリックはない場合が多い。その他検査費用や診療費、技術料などが加わります。


 これらの薬が残薬になることだけは避けたいものです。患者自身が効果や必要性を理解してきちんと服用することをアドヒアランスと言いますが、この意識の向上が薬剤師の大切な業務です。一方で、薬の値段や医療費の負荷が大きすぎると治療の中断につながります。ジェネリックを使うだけでなく、一世代古いタイプの薬でも十分効果が期待できる場合もあり、患者さん一人ひとりに向き合って、患者さんの立場で医師に相談や提案ができる薬剤師であって欲しいと思っています。